(クイックリファレンス)

1 イントロダクション

Authors: Graeme Rocher, Peter Ledbrook, Marc Palmer, Jeff Brown, Luke Daley, Burt Beckwith ,
Japanese Translation: T.Yamamoto, Japanese Grails Doc Translating Team
このドキュメントの内容はスナップショットバージョンを元に意訳されているため、一部現行バージョンでは未対応の機能もあります。

Version: 2.1.0.BUILD-SNAPSHOT

1 イントロダクション

現在のJavaでのWeb開発は必要以上に複雑です。JavaのほとんどのWebフレームワークは複雑でDon't Repeat Yourself (DRY)ではありません。

Rails,Django,TurboGearsといったダイナミックフレームワークはWebアプリケーションの考え方をよりモダンな方へ導いてくれました。Grailsは、Spring、Hibernateといった既に確立したJavaテクノロジーで、それらのダイナミックフレームワーク概念に基づいてJava環境でのWebアプリケーション開発の複雑さを軽減させます。

Grailsは、多くのコア・テクノロジーによるWeb開発でのパズルような断片をプラグインで連携させることで解決を試みたフルスタックフレームワークです。以下の内容をすぐに利用できます:

  • Hibernate上に構築された、簡単に利用できるオブジェクト・リレーショナル・マッピング(ORM)レイヤ
  • 表現豊かなビューテクノロジーGroovy Server Pages (GSP)
  • コントローラレイヤは Spring MVCを利用
  • コマンドラインスクリプト環境にはGroovy版のAnt Gant
  • リロード可能に設定された組込 Tomcat
  • 組込 Spring による依存注入
  • SpringのMessageSourceで実装された国際化(i18n)対応
  • Springフレームワークのトランザクション概念によるサービスレイヤのトランザクション

これら全ては、 Groovy と多くのDomain Specific Languages (DSL ドメイン特化言語)を活用して簡単に使用できるように実装されています。

このドキュメントは、Grailsのスタートガイドと、GrailsでのWebアプリケーション構築を紹介します。

1.1 Grails 2.0の新機能

このセクションでは、現在2.0に存在する新機能、ビルドシステム、コアAPI、Web階層、永続化関連の強化等に分類し掘り下げて紹介します。他にも向上、強化した内容が多数ありますが、ここではハイライト的に紹介してます。

1.1.1 開発環境機能

インタラクティブモードとコンソールの強化

Grails 2.0では、より簡潔でユーザフレンドリな、新コンソール出力を実装しました。以下の例はテストを実行した内容です。

コマンド実行の際に、重要な情報のみ1行を更新表示するようになりました。例えば、以前のバージョンまでは、warコマンドを実行すると大量のログが表示されていましたが、2.0からは1行だけで表示されます。

さらに、単にgrailsコマンドをコンソールで実行するだけで、新しいインタラクティブモードが開始され、JVMが起動したままとなりコマンドが迅速に実行でき、タブ補完、コマンド履歴も使用できます。

詳しい情報は、ユーザガイドのコンソールとインタラクティブモードを参照してください。 インタラクティブモード.

リロードエージェント

Grails 2.0からのリロード機能は、クラスローダを使用せずJVMエージェントを使用してクラスファイルのリロードを行います。その結果、変更保存されたクラスが確実にメモリにロードされようになり、変更時のリロードが大いに向上しました。今までより、cleanコマンドの実行回数を減らすことができます。

新テストレポートとドキュメントテンプレート

以前のレポートよりクリーンでユーザフレンドリーなテストリポートテンプレートに変更されました:

さらに、アプリケーションやプラグインで使用する、Grailsドキュメントエンジンのテンプレートもリニューアルされました:

詳細はドキュメントエンジンのセクションを参照してください。 プロジェクト・ドキュメント

プロジェクトドキュメントでの目次

The old documentation engine relied on you putting section numbers into the gdoc filenames. Although convenient, this effectively made it difficult to restructure your user guide by inserting new chapters and sections. In addition, any such restructuring or renaming of section titles resulted in breaking changes to the URLs.

You can now use logical names for your gdoc files and define the structure and section titles in a YAML table-of-contents file, as described in the section on the documentation engine. The logical names appear in the URLs, so as long as you don't change those, your URLs will always remain the same no matter how much restructuring or changing of titles you do.

Grails 2.0 even provides a migrate-docs command to aid you in migrating existing gdoc user guides.

エラーレポートと分析表示の強化

スタックトレース分析、コード内の位置表示など、エラーレポートと分析表示が向上しました:

そして、さらにスタックトレースフィルターが強化され、関係のあるトレースのみが表示されるようになりました:

Line | Method
->>   9 | getValue     in Book.groovy
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
|     7 | getBookValue in BookService.groovy
|   886 | runTask . .  in ThreadPoolExecutor.java
|   908 | run          in     ''
^   662 | run . . . .  in Thread.java

H2データベースとDBコンソール

Grails 2.0では、今までのHSQLDBに代わりH2データベースを使用します。H2データベース付属のコンソール機能を開発モードで有効にしています。(URI /dbconsoleで表示可能) メモリ動作のデータベースでも簡単にブラウザからクエリ実行することができます:

プラグイン使用数等のトラッキング機能

どのプラグインが人気があるのか等の情報を収集する。プラグイン使用レポートを収集する機能が実装されました。今後のプラグインサポートや、人気の無いプラグインの今後の努力などに役立てます。

下位互換の対応を減らしている主なプラグインや、人気の無いプラグイン等の開発者が成果を確認して、今後のサポート向上とロードマップの進行を手助けになります。

依存管理機能改善

Ivyでハンドリングされている依存管理機能に多くの改善をしました:

  • Grailsは、 BuildConfig.groovy を変更しない限り前回の依存解決した内容を再解決させないように前回の内容をキャッシュするようになりました。
  • プラグイン依存関係も grails dependency-report のレポートに現れるようになりました。
  • release-plugin で発行されたプラグインは、推移的なプラグイン依存をPOMに発行するようになりました。
  • ivyキャッシュ用ディレクトリを BuildConfig.groovy で変更できます。

grails.project.dependency.resolution = {
    cacheDir "target/ivy-cache"
}

  • settings.groovyに設定することで、全てのプロジェクトのivyキャッシュディレクトリを変更できます。

grails.dependency.cache.dir = "${userHome}/.ivy2/cache"

  • リポジトリの引継を完全に無効にできます(他のプラグインで定義されている場合等):

grails.project.dependency.resolution = {

repositories { inherits false // Whether to inherit repository definitions from plugins … } … }

  • チェックサムを無効にできます:

grails.project.dependency.resolution = {
    checksums false // whether to verify checksums or not
}

1.1.2 コア機能

バイナリプラグイン

Grailsプラグインは、JARファイルとしてパッケージして、Mavenリポジトリへ発行できるようになりました。GSPや静的リソースでも可能です。詳しくは、 バイナリプラグイン のセクションを参考にしてください。

Groovy 1.8

Grails 2.0は、多くの新機能と向上をしたGroovy 1.8がバンドルされています。 Groovy 1.8 リリースノート

Spring 3.1 プロファイルサポート

Grailsの環境サポートがSpring 3.1プロフィールサポートとブリッジできます。例えば、Grailsの環境で"production"で動作している場合、Springプロフィール"production"がアクティベートされます。これによって、Springビーン定義APIでのビーン定義でプロフィールを指定できます。

1.1.3 Web機能

コントローラのアクションにメソッドを利用

以前のクロージャで記述していたコントローラアクションをメソッドで記述可能になりました。これからはメソッド記述を推奨します。:

// メソッドのアクション (action as a method)
def index() {

} // クロージャのアクション (action as a closure) def index = {

}

アクションに引数を指定してバインド

フォームエレメントのname属性を、アクションメソッドの引数に指定する方法でのバインドが可能になりました。 次のようなフォームを例に:

<g:form name="myForm" action="save">
    <input name="name" />
    <input name="age" />
</g:form>

以下のように、それぞれを引数として定義、パラメータの型も自動で適した型に変換します:

def save(String name, int age) {
    // remaining
}

静的リソース抽象化

JavaScript、CSS、画像などのリソースを管理、圧縮、キャッシュ、gzipを行う 静的リソース抽象化機能 が追加されました。

サーブレット3.0の非同期処理

Grailsはサーブレット3.0をサポートしました。サーブレット3.0での機能、非同期処理が使用可能です:

def index() {
    def ctx = startAsync()
    ctx.start {
        new Book(title:"The Stand").save()
        render template:"books", model:[books:Book.list()]
        ctx.complete()
    }
}

リンク生成API

全面的に使用可能なリンク生成API LinkGenerator クラスが追加されました。コントローラのコンテキスト以外のどこからでも使用できます。例としてサービス、バックグラウンド処理、非同期タスク、リクエスト以外の場所でリンクが生成できます。

LinkGenerator grailsLinkGenerator

def generateLink() { grailsLinkGenerator.link(controller:"book", action:"list") }

ページレンダリングAPI

LinkGenerator と同じく新規に追加されたAPI、 PageRenderer は、Webリクエスト以外の場所で、GSPページが描写可能です。例えば、Webサービス、スケジュールジョブなどで使用します。 PageRenderer サービスはコントローラの render メソッドと同じように使用します。

grails.gsp.PageRenderer groovyPageRenderer

void welcomeUser(User user) { def contents = groovyPageRenderer.render(view:"/emails/welcomeLetter", model:[user: user]) sendEmail { to user.email body contents } }

PageRenderer sサービスはGSPからHTMLを生成するのも可能です。

new File("/path/to/welcome.html").withWriter { w ->
    groovyPageRenderer.renderTo(view:"/page/content", w)
}

フィルター除外機能

フィルターでのコントローラ・アクション・URIの除外指定が実装されました。

filter1(actionExclude: 'log*') {
    before = {
        // …
    }
}
filter2(controllerExclude: 'auth') {
    before = {
        // …
    }
}

filter3(uriExclude: '/secure*') { before = { // … } }

パフォーマンスの向上

再度最適化したGSPコンパイラでGSPのパフォーマンスはさらに向上しました。

HTML5スカッフォルド

HTML5ベースのスカッフォールドUIになりました:

jQueryがデフォルトになりました

jQueryプラグインがデフォルトのJavaScriptライブラリとしてGrailsアプリケーションにインストールされます。 下位互換として、Prototypeはプラグインとして提供しています。 Prototypeついてはプラグインのドキュメントを参考にしてください。 Prototype plugin

簡単な日付解析

paramsオブジェクトのnullセーフメソッドに日付用のdateが追加されました。
def val = params.date('myDate', 'dd-MM-yyyy')

// or a list for formats def val = params.date('myDate', ['yyyy-MM-dd', 'yyyyMMdd', 'yyMMdd'])

// or the format read from messages.properties via the key 'date.myDate.format' def val = params.date('myDate')

URLフォーマットのカスタマイズ

The default URL Mapping mechanism supports camel case names in the URLs. The default URL for accessing an action named addNumbers in a controller named MathHelperController would be something like /mathHelper/addNumbers. Grails allows for the customization of this pattern and provides an implementation which replaces the camel case convention with a hyphenated convention that would support URLs like /math-helper/add-numbers. To enable hyphenated URLs assign a value of "hyphenated" to the grails.web.url.converter property in grails-app/conf/Config.groovy.

// grails-app/conf/Config.groovy

grails.web.url.converter = 'hyphenated'

Arbitrary strategies may be plugged in by providing a class which implements the UrlConverter interface and adding an instance of that class to the Spring application context with the bean name of grails.web.UrlConverter.BEAN_NAME. If Grails finds a bean in the context with that name, it will be used as the default converter and there is no need to assign a value to the grails.web.url.converter config property.

// src/groovy/com/myapplication/MyUrlConverterImpl.groovy

package com.myapplication

class MyUrlConverterImpl implements grails.web.UrlConverter {

String toUrlElement(String propertyOrClassName) { // return some representation of a property or class name that should be used in URLs… } }

// grails-app/conf/spring/resources.groovy

beans = { "${grails.web.UrlConverter.BEAN_NAME}"(com.myapplication.MyUrlConverterImpl) }

1.1.4 永続化機能

GORM API

GORM APIは、 GormStaticApiGormInstanceApiGormValidationApi というクラスに置き換えられたことによって、全てのドメインのバイトコードレベルに注入されます。この実装でIDEでのコード補完、Javaとの統合、様々なデータストアへのGORM実装への可能性が向上しました。

DetachedクライテリアとWhereクエリー

Grails 2.0 features support for DetachedCriteria which are criteria queries that are not associated with any session or connection and thus can be more easily reused and composed:

def criteria = new DetachedCriteria(Person).build {
    eq 'lastName', 'Simpson'
}
def results = criteria.list(max:4, sort:"firstName")

To support the addition of DetachedCriteria queries and encourage their use a new where method and DSL has been introduced to greatly reduce the complexity of criteria queries:

def query = Person.where {
    (lastName != "Simpson" && firstName != "Fred") || (firstName == "Bart" && age > 9)
}
def results = query.list(sort:"firstName")

See the documentation on DetachedCriteria and Where Queries for more information.

新findOrCreateとfindOrSaveメソッド

ドメインクラスに、findWhereやfindByメソッドに似た、nullを返さない、findOrCreateWhere, findOrSaveWhere, findOrCreateBy, findOrSaveByのクエリーをサポートしました。実行結果にインスタンスが見つからない場合は、指定された値で、新規にインスタンスを作成して返します。findOrSaveWhereとfindOrSaveByの場合はインスタンスを保存してからインスタンスを返します。

def book = Book.findOrCreateWhere(author: 'Douglas Adams', title: "The Hitchiker's Guide To The Galaxy")
def book = Book.findOrSaveWhere(author: 'Daniel Suarez', title: 'Daemon')
def book = Book.findOrCreateByAuthorAndTitle('Daniel Suarez', 'Daemon')
def book = Book.findOrSaveByAuthorAndTitle('Daniel Suarez', 'Daemon')

抽象クラス継承のサポート

GORMが抽象クラス継承階層をサポートしました。これによって、関連リンクやクエリ等を抽象クラスに定義することができます:

abstract class Media {
    String title
    …
}
class Book extends Media {
}
class Album extends Media {

} class Account { static hasMany = [purchasedMedia:Media] }

..

def allMedia = Media.list()

複数データソースサポート

DataSource.groovyに複数データソースの定義が可能になり、特定のドメインに複数のデータソースが設定できます:

class ZipCode {

String code

static mapping = { datasource 'ZIP_CODES' } }

複数のデータソースを定義したドメインでは、GORMメソッドの前にネームスペースとしてデータソース名を定義することで特定した実行が可能です:

def zipCode = ZipCode.auditing.get(42)

詳しくは 複数データソース を参照してください。

データベースマイグレーション

データベースマイグレーションを行うプラグインが、Grails 2.0用にデザイン構築されました。現行の状況との違いや、変更のロールバックがデータベースマイグレーションで可能になります。 database migration plugin

データベースリバースエンジニアリング

データベースリバースエンジニアリングを行うプラグインが、Grails 2.0用にデザイン構築されました。既存のデータベーススキーマからドメインクラスを生成可能とします。 database reverse engineering

Hibernate 3.6

Grails 2.0では、Hibernate 3.6を使用しています。

Bagコレクション

SetのユニークまたはListの順序必要としない場合でにおいて、大きなコレクションロードのメモリーとパフォーマンス問題を回避できるコレクションマッピング、Hibernate Bagが使用できるようになりました。

詳しくは セット、リスト、マップ を参照してください。

1.1.5 テスト機能

新Unitテストのコンソール出力

test-app実行時のテストコンソール出力が向上しました:

新しいUnitテストAPI

JUnit3,4,Spock(Spock 0.6以上)のテストに対応した、Mixinsベースの新しUnitテストAPIが追加されました:

import grails.test.mixin.TestFor

@TestFor(SimpleController) class SimpleControllerTests { void testIndex() { controller.home()

assert view == "/simple/homePage" assert model.title == "Hello World" } }

テストのドキュメントが、この新しいフレームワークのために書き直されました。詳細は テストのドキュメント を参照してください。

GORMのUnitテスト

メモリ上で動作するGORM実装により、今までにサポートされていなかった、クライテリアクエリ、名前付きクエリなど、様々なGORM APIのテストがUnitテストで可能になりました。

インタラクティブモードで快速なUnitテストを

'grails'と入力するだけで実行できるインタラクティブモードでのUnitテスト・統合テストの実行速度が向上しました。

Unit Test スカッフォルド

スカッフォルドされたコントローラのUnitテストが生成されるようになりました。